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コラム

《Dr.もん次朗86》中心が安定するほど、末端は自由になれる。

2026/09/20

③中心が安定するほど、末端は自由になれる。

なぜ "inner muscle系" を育てるのか――赤筋・歩行、ジョグ、そして50%強度(息切れしない!)

では、inner muscle系・をどう育てるのか?

前章では、身体の中心軸をつくり、全身をつなぐ基盤として、私は「inner muscle」という言葉を使いました。

では、このinner muscleを育てるには、どのような運動をすればよいのでしょうか。

ここでも私は、現代のトレーニングに一つの疑問を感じています。

筋肉を鍛えるというと、多くの場合、

「より強く、より速く、より大きな負荷をかける」

という方向へ進みます。

しかし、本当にそれだけでよいのでしょうか。

私はむしろ、身体の中心軸を支え、長時間働き続け、全身の動きをつなぐ筋肉を育てるためには、これとは少し違う刺激が必要なのではないかと考えています。

身体を支え続ける筋肉

人間は立っているだけでも、重力に逆らいながら姿勢を保っています。

そして歩くときには、身体の中心を大きく崩さないようにしながら、左右の脚を交互に動かし続けます。

こうした働きに必要なのは、一瞬の大きな力ではありません。

小さな力を、長く、安定して出し続ける能力です。

そのため、
姿勢保持や持続的な運動に関わる筋群では、一般に酸化能力が高く、疲労しにくいType I線維、いわゆる「赤筋」の役割が重要になります。

私はこの「持続して身体を支える筋肉」と、前章で述べたinner muscleの機能には、大きな重なりがあると考えています。

ただし、inner muscleと赤筋は同じ解剖学的分類ではありません。

ここでいうinner muscleとは、あくまでも私が身体全体の働きを説明するために使っている、機能的な概念です。

筋肉は「使われ方」に適応する !

身体には、とても基本的な原則があります。

Specificity――特異性の原則です。

強い力を繰り返し要求すれば、身体は強い力を出す方向へ適応する。

速い動きを繰り返せば、速い動きに適応する。

そして、

弱い力でも長く使い続ければ、身体は長く働き続ける方向へ適応する。

私はここが非常に重要だと思っています。

中心軸を支え、全身をつなぎ、長時間働き続ける身体をつくりたいのであれば、その性質に合った刺激を与える必要があります。

つまり、

ゆっくり、長く、繰り返す。

強い刺激を短時間与えることとは、別のトレーニングです。

だから私は「歩く・ジョグする」ことを重視する。

ここで、最も基本的な人間の運動に戻ります。

歩くこと・ジョグすること、です。

歩行や・ジョグは一見、あまりにも簡単な運動に見えます。

しかし実際には、非常に複雑です。

右脚と左脚が交互に動き、骨盤が動き、体幹がそれを受け止め、腕が自然に振られ、視線を保ちながら身体全体が前へ進んでいく。

しかも、その間ずっと重力を受け続けています。

つまり歩行・ジョグとは、

中心軸を保ちながら、全身を連動させ続ける運動

とも言えます。

特定の筋肉だけを意識して鍛える必要はありません。

身体全体を自然に使い続ける。

私は、これが inner muscle 系を含めた持久系の身体を育てるための、最も基本的なトレーニングの一つだと考えています。

強ければ強いほど良いのか?

ここで、もう一つ大切な問題があります。

「では、速く歩けば(ジョグすれば)もっと効果があるのではないか?」

「走ればさらに良いのではないか?」

「もっと心拍数を上げれば、もっと鍛えられるのではないか?」

必ずしもそうではない、と私は考えています。

運動強度を上げていけば、身体が要求するものも変わっていきます。

より大きな筋力が必要になり、速筋系の動員も増え、糖質への依存も高まり、呼吸も大きくなっていきます。

つまり、刺激の質そのものが変わっていくのです。

身体の中心軸を育てたり・健康を目的として持久系の基盤を育てたいのであれば、「最大の刺激」を求める必要はありません。

必要なのは、

目的に対して最適な刺激です。

私がCPXを見ながら感じてきたこと

私は30年以上、CPX(心肺運動負荷試験)を通して、一般の患者さんから多くのスポーツ選手まで見てきました。

通常、CPXではAT(Anaerobic Threshold)やVO₂maxが重視されます。

もちろん、これらは重要な指標です。

しかし私は長年CPXを見ながら、次第に別の領域に関心を持つようになりました。

それは、

ATより下の、まだ呼吸が安定している領域です。

この領域では、身体は比較的安定した有酸素代謝を続けることができます。

そして私が特に注目してきたのが、RQ(呼吸商/呼吸交換比)の動きです。

強度を上げ、息が激しくなってからの身体を見るだけではなく、

まだ息切れしていないとき、身体がどのようにエネルギーを使っているのか。

そこに、その人の「基礎体力」の重要な情報が隠れているのではないかと考えるようになりました。

「息切れしない」という身体からのサイン

一般の人が運動するとき、毎回CPXを行うことはできません。

ATを正確に測ることもできません。

では、どうすればよいのでしょう。

私は臨床では、もっと単純な身体からのサインを大切にしています。

それが、

「息切れしない」

ということです。

呼吸が乱れず、会話もできる。

無理に頑張っている感じがない。

そして、その状態なら少し長く続けられる。

この領域を私は大切にしています。

≪つづく≫

Dr.もん次朗#86(9.20)

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