ドクター長﨑の診断
オーバートレーニング症候群について、長﨑医院長の診断が朝日新聞夕刊の記事に掲載されました。
今年こそフルマラソンを完走したい。頑張っているのに、記録がよくならない。それどころか、じっとしていても何だか疲れる…。そんな人は、練習のしすぎが原因の「オーバートレーニング症候群」かもしれない。特に、きまじめな人は注意が必要だ。
過剰なトレーニングを繰り返すことで、回復しないまま疲れが積み重なり、慢性の疲労状態になることをオーバートレーニング症候群と呼んでいる。
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一般的に、練習の直後は疲れて、もともとよりも能力が落ちる。休んで疲労がとれ、以前より少し能力が伸びたところで、鍛錬を重ねていくというのが、トレーニングの考え方だ。疲れが残っているのに無理を重ねると、能力はどんどん落ちてしまう。症状が進むと、免疫力が落ちて風邪をひきやすくなったり、不眠や抑うつ状態になったりするとされる。
トライアスロン大会への出場経験がある長﨑内科クリニック(静岡県焼津市)の長﨑文彦院長によると、運動にある程度慣れ、次のステップを目指そうとしている人がなりやすい。体力に自信がつくと、より強いトレーニングで記録を伸ばそうと、自分を追い込んでしまいがちだ。「ふつうの人は、調子が悪ければ力を抜く。まじめな人は『もっとがんばらないと』と考えてしまう」と長﨑さん。
無理をしていないかどうかを、早めに知るためにすすめられるのが、朝起きたときの脈拍チェック。疲れていると心拍数は増しやすい。注意すべき回数は個人ごとに違うが、1分間の回数がふだんより10拍以上多いなら、練習のしすぎを疑った方がいい、という。
オーバートレーニング症候群については分かっていないことも多いが、長﨑さんは患者のデータを通して、「持久的な運動に使われる筋肉が、激しい練習のせいで疲れの抜けにくい状態になる」という面に注目する。長距離を速く走ろうとする人がなりやすい。
こうしたタイプには「ひたすら休む」より、歩行したり、ゆっくり走ったりすることをすすめる。ゆっくり走っても、持久力は伸ばすことができるからだという。ただ、やはり無理はいけない。
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この症候群は、骨や関節といった運動器へのトラブルが伴うことも少なくない。整形外科医で、びわこ成蹊スポーツ大教授の大久保衛(まもる)さんによると、すねや足の骨が疲労で折れてしまうのが代表的だ。激しい練習量の選手や、骨が未熟な若い世代に起きやすい。
疲れが重なると、筋肉が体の衝撃を吸収するバネの役を果たせなくなり、骨への負荷が増してしまう。「予防には、ふだんから筋力をつけて、関節を柔軟にしておくことが大切です」と大久保さんはいっている。(田村建二)